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誤訳に気を付けよう

「K-19」という映画を観た。米ソ冷戦下で原子炉事故を起こしたソ連海軍原子力潜水艦の実話に脚色を加えたフィクション映画である。

なかなか面白い映画であった。実際の事故についても調べてみようと思いWikipediaを開いた。

私は英語を学び始めてからだいたい10年くらいになるが、未だにやはり、母語である日本語の文の方が断然読みやすい。ささっと読みたかったので日本語版のウィキペディアで「K-19」の記事を読むと、あまり説明がない。

仕方がないので英語版で開くとだいぶ詳しく載っている。というわけで読み進めてみると、日本語版と異なる記述があった。

「K-19」英語版ウィキペディア において" A diesel submarine, S-270, picked up K-19's low-power distress transmissions and joined up with it."(ディーゼル潜水艦S270がK-19による低出力の遭難信号を受信し、それと合流した。)となっている箇所が「K-19」日本語版ウィキペディアにおいては「K-19は友軍のディーゼル潜水艦によって、低下した伝動装置の音を捕捉され、同艦とのランデブーが可能となり、乗員が収容され、母港に曳航された。」となっている。

問題なのは"low-power distress transmissions"という部分と「低下した伝動装置の音」の部分である。どちらが間違っているのだろうか。

その部分を「K-19」ドイツ語版ウィキペディアでみてみると" Die Notrufe von K-19"と書かれており、つまりは英語版と同じく友軍のディーゼル潜水艦が受け取ったのは救難信号であるという。では、日本語版における「低下した伝動装置の音」という記述は何なのか。

恐らくそれは誤訳であると思われる。"low-power distress transmission"(低出力の救難信号)というのを「低下した伝動装置の音」と訳してしまったのだろう。transmissionには伝動装置という意味もあるので、そこを間違えたのだろう。

実際、翻訳というものは難しい。ちょっとした勘違いで文全体の意味が変わってしまうのである。

ウィキペディアはアマチュアが執筆しているが、誤訳はプロでもやるものだ。例えばK-19の映画の中でも魚雷となるべき字幕がミサイルとなっている箇所があった。

しかしもっと酷いのはYouTubeやそこらのブログで見かける、アマチュアが趣味でやっている洋楽和訳であろう。まさに誤訳陳列場の様相を呈している。

翻訳に完全な正解は存在しない。翻訳者が異なればその翻訳も異なる。言語とは曖昧なものであるからだ。なのでことさら詩や歌などは受け取る側の解釈によって翻訳の仕方が違ったりするのは当たり前である。しかし、誤訳は存在する。明らかに意味を取り違えてしまうことがあるのだ。

趣味翻訳では特にスラングなどが多用されている曲は意味がひっくり返ってしまって全く別のものに翻訳されていることが少なくない。

洋楽翻訳というのは、ことに有名な曲などは、多くの人が閲覧する。アクセス数が稼げる。そして自分の翻訳を人に読んでもらうというのはとても良い心持がする。なのでYouTube等に間違えだらけの和訳動画を載せたりするわけである。そうとも知らない罪なき人々はその翻訳をみて、ああこういう意味の曲だったのか、と納得してしまう。つまり誤訳者は人々を騙していることになる。知らなかったでは済まされない。

ネットにはそのようなものが溢れているのでくれぐれも気を付けよう。






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